毎週、スタッフの持ち回りでお届けする「サイゴン・街角風景」。
今週は、ベトナム人スタッフのMaruchanより、「ホーチミン市での新型コロナウイルスワクチン接種」のお話です。
4月末から広がった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の国内第4波で最も深刻な被害を受けているホーチミン市。Maruchanが住む同市では、7月から市民への大量ワクチン接種が急ピッチで進められています。
街区・村レベルの人民委員会は管轄地域内の住民のワクチン接種を手配することになっていますが、町内会長が町内の世帯を回ってワクチン接種に関する資料を配るところもあれば、手作業に加えベトナム最大のモバイル無料通話・メッセージアプリ「ザロ(Zalo)」や、街区・村のウェブサイト、グーグルドキュメントなどのオンラインツールを活かして接種登録をオンライン化するところもあります。
ベトナムでは国籍を問わず、全員がワクチン接種を無料で受けることができることになっているため、Maruchanと同僚の大半が7月から8月にかけて、接種会場として使用される地元の子供文化会館や教育施設などでそれぞれ1回目の接種を無事に受けました。
<ホーチミン市直轄トゥードゥック市の接種会場での様子>
<ゴーバップ区の接種会場での様子>
<タンビン区の接種会場での様子>
<ビンチャイン郡の接種会場での様子>
ホーチミン市保健局によると、同市では8月20日までにワクチン529万回分が無事に投与され、成人(18歳以上)人口の76.0%が少なくとも1回目の接種を受けたと報告されています。反体制勢力がベトナム人の反中心理につけ込んで中国製ワクチンのボイコットを呼びかけなければ、接種比率はもっと高くなっていたでしょう。
職業柄、普段から反体制的な情報ソースのニュースも含め、ベトナムに関連するニュースをチェックしているため、反体制勢力がホーチミン市での深刻な状況に便乗し、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「フェイスブック(Facebook)」や動画配信サービス「ユーチューブ(Youtube)」などで、国民への大量ワクチン接種など政府の新型コロナ対策を歪めるなどして国防安全保障を破壊しようとする動きが見られます。
この背景には、新型コロナの国内第4波の始まる時期があまりにも偶然なことに、サイゴン陥落 (※)と重なり、こうした中で出稼ぎ労働者を中心に多くの人々が市から脱出していったことがあります。
(※)1975年4月30日、南ベトナムの首都サイゴンの大統領官邸(現在のホーチミン市の統一会堂)に南ベトナム解放民族戦線の戦車が突入し、ズオン・バン・ミン大統領代行が無条件降伏を発表。
さらに、アフガニスタンで反政府勢力タリバンが8月15日、首都カブールに進攻し大統領府を掌握したことを受け、同国国民が国から脱出すべく、多くの人々が空港に押し寄せ、複数人が機体にしがみついたまま離陸して振り落とされるなどして死亡した様子を撮影した動画がベトナム国内でも大々的に報じられてサイゴン陥落時の様子を連想させ、大きな反響を呼んでいます。
事実、欧米メーカーからのワクチン納入が大いに遅れているため、市は保健省から配分されるワクチンに加え、市当局と太いパイプを築いている華僑系不動産開発大手バンティンファットグループ(Van Thinh Phat Group)のコネクションを活かして中国シノファーム(Sinopharm=中国医薬集団)が製造する新型コロナウイルスワクチン「ベロセル(Vero Cell)」を自己調達しています。ワクチンが限られる中で選り好みは禁物だとMaruchanは思いますが、反体制勢力はインターネットのあちらこちらで「ハノイ市で欧米製の高品質のワクチンを投与しているのに、ホーチミン市では中国製の低品質のものを使っている」、「中国製ワクチンを接種すると身体が麻痺してしまう」などとフェイクニュースを流布し、民族分裂を扇動して不和を生じさせようとしています。
ホーチミン市における1日あたりのワクチン投与回数の推移を見れば、この心理戦は明らかに市民への大量ワクチン接種キャンペーンに影響を与えていることが分かりますが、マスコミと各行政区で地元当局が情報周知に努めているため、中国製ワクチンの接種が着々と進んでおり、1日当たり10万~20万人が接種を受けています。なお、ホーチミン市では保健省から配分されたワクチンのほぼ全てを使い切ったため、8月中旬からは中国製ワクチンの投与が開始されました。
<ホーチミン市における1日あたりのワクチン投与回数の推移>(ソース:Zing)
ビンチャイン郡に住む同僚にもこのほど、中国製ワクチンが無事に投与されました。
<中国製ワクチンの接種に同意するか否かに関する市民の意見聴取書>
<ビンチャイン郡の教育施設で中国製ワクチンの接種を待つ市民>
接種を受けた後は紙製のワクチン接種確認書が配られます。接種会場のデータ処理能力にもよりますが、後日さらにアプリ「電子健康手帳(So suc khoe dien tu)」にワクチン証明書が反映されます。
<紙製のワクチン接種確認書>
<個人情報やワクチン種類、接種日時、場所などの詳細データを含むアプリ上のワクチン接種証明書>
さてさて、気分転換のために、「ワクチン汚職」を働く幹部らを非難するインターネット上のホットトレンドをご紹介しましょう。
<バカやろう!選り好みしてる場合じゃねぇ。俺だったら地元で中国製があれば、すぐ接種してたぞ!>
普段から「ドラえもん」の吹き出しの内容を変えて笑い話を作るのが大好きなベトナム人ですが、今回の「作品」では、ジャイアンが悪役として登場し、家族のコネクションを活かして自分は欧米製のワクチンを接種したにもかかわらず、人々には中国製ワクチンの接種を求めます。7月のことなのであまり詳しく覚えていませんが、この「作品」が投稿されると、急速にシェアされたようです。
あ、でも誤解しないでくださいね。ジャイアンは乱暴な性格で友達を殴ったり、玩具などを奪ったりしますが、力があって義理固いですから、軍師役のスネ夫と肩を並べ、ベトナム人の間で「ドラえもん」の中で一番愛されているキャラクターです。
(Photo by Maruchan, Nguyen Nhan, Nguyen Thanh, Hugolina)
------------------------------
今回は、ここまでです。
最後まで、お読みいただきましてありがとうございます。
今後とも、「ベ トナム株・経済情報」をよろしくお願いいたします。
|